<違法中国漁船>「摘発は戦争」韓国警察隊員語る
毎日新聞 12月18日(日)11時13分配信
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海洋警察隊員殺傷事件で拿捕された漁船の船員が振り回したおもり付きの凶器を手にする沈政善さん=仁川海洋警察署で2011年12月16日午後、西脇真一撮影
「大きく揺れる船の上でありとあらゆる物が飛んでくる。一言で言うなら戦争だ」。仁川(インチョン)海洋警察署警備救難係の沈政善(シムジョンソン)さん(45)は、違法操業中の中国漁船を摘発する際の様子をこう表現した。12日、沈さんは同僚の李清好(イチョンホ)さん(41)を中国人船長の凶刃で失った。「取り締まりがすべてではない。中国側は政府レベルで違法操業を遮断すべきだ」。沈さんは、抜本的な対策の必要性を訴えた。【仁川で西脇真一】
◇10キロおもり振り回し
薄暗い仁川海洋警察署1階の廊下。半開きの扉から捜査課の中をのぞくと、違法操業船に乗っていた中国人船員とみられる赤いジャージー姿の男がいすに座っていた。中から出てきた沈さんは、カギとおもりの付いた棒を持って来た。今回の事件で船員が振り回した凶器の一つだ。おもりは10キロはある。直撃されたらひとたまりもない。床には竹やりも置いてあった。
事件は12日早朝発生した。停船命令に応じない「魯文漁」(66トン)に向け、警備艇から16人が高速ボートに分乗して出動。対テロ訓練を受けた特殊部隊員もおり、彼らが中国人船員の阻止線を突破する。せん光弾を発射し、「魯文漁」に乗り移る。船員8人を制圧し、李さんらが船長の程大偉容疑者(42)を取り押さえようと操舵(そうだ)室に入った。
ところが、程容疑者は刃物で李さんら2人を刺して抵抗した。李さんは防刃チョッキを着用していたが保護のない脇腹を刺された。当時、一緒に違法操業していた他の漁船が「魯文漁」の側面に衝突を繰り返して摘発を妨害しており、これに足をすくわれた可能性もある。
◇中国は厳しい対応を
沈さんによると、中国漁船が凶悪化したのは04年ごろから。「激しく抵抗すれば捕まりにくいことを悟ったため」と分析する。また、中国漁船は簡単に捕まらないよう気象条件の悪いときを狙って韓国側排他的経済水域(EEZ)へ侵入する。07年ごろからは、十数隻の漁船が互いをロープで横一列に縛る「連環計」の形を取って逃走するケースが出てきた。「連環計だと相手は100人以上となり、手を出しにくくなる」という。
韓国政府は今回の死亡事件を受け、銃使用規制の緩和を表明した。沈さんは歓迎するが、一方で「命は重い。そう簡単には使用できないだろう」とも話す。
違法操業漁船に対する罰金は徐々に引き上げられ、仁川海洋警察署の場合、平均7000万ウォン(472万円)を科す。だが「中国側は船団を組み、支払いに備えて金を集めておく互助会システムも整えている」そうだ。
中国の漁場は海洋汚染や乱獲で枯渇しているとみられる。取り調べにも「違法なのは分かっているが、魚が取れないから来た」と供述するケースが多い。
17日付東亜日報によると韓国側EEZに入ってくる中国漁船は1日平均約3000隻で、そのうち85%は違法。海洋警察は毎年、中国漁船を500隻近く拿捕(だほ)するが、全体のごく一部に過ぎない。「いくら捕まえても違法操業はなくならない」。沈さんは、中国側の厳しい対応を強く求めた。
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